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それぞれの風景。

ひとにはひとの楽しみがあるものだな。それはそれでいい。見え
る景色がちがうだけだ。それだけだ。

いつも行く地下街の喫茶店に競馬新聞をカウンターにひろげタバ
コをたて続けに吸いまくるオジサンがいる。タバコの火が消えな
いうちにまた次のタバコに火をつける、まるで聖火ランナーのよ
うなオジサンだ。
ぼくはいつも朝早い時間にトーストをかじりながら珈琲を飲む。
その時間にはすでにオジサンはいる。ぼくがいつもライカをカウ
ンターの上に置いてノートを開いているものだからオジサンは不
思議そうにしていた。ある日オジサンはぼくに声をかけてきた。
「君はジャーナリストかい?」
「そう見えますか?」と訊くと、
「いつもカメラをもって神経質そうな顔でなにか書いてるからさ
、ちがうのかい?」
「ふつうの社会人ですよ。」と応えると「ふ~ん。」と言って新
聞に目をもどした。
それから会うたびにすこし話すようになった。
「競馬はやらんのか?」と訊いてきたので「やりません。」と応
えると「酒は?」「タバコは?」と質問の嵐。酒もタバコもやり
ませんと言うと「なにを楽しみに生きてるんだ?」と言いまた新
聞に目を移す。きくところによるとオジサンはどこかの社長らし
い。会社は息子にまかせて競馬ざんまい。夜はススキノ朝帰り、
それが彼のライフスタイルだ。社長は小指をたてて、「これがや
ってるスナックに連れていって飲ましてやる!競馬も教えてやる
から今夜いくぞ!」と言いぼくにハイライトをすすめた。「いや
いや結構です、ぼくは社長と趣味がちがうようなので、」とお断
りすると「君はおもしろみのない男だなあ。」とか言ってまた聖
火ランナーのようにタバコを吸った。

楽しいことを知らず死んでいくのはたしかにつまんない。ひとに
はひとの楽しみがあるものだ。
ぼくはお気に入りの椅子に腰掛け、好きな音楽を聴いたり本を読
んだりするのが好きだ。ハンク・ジョーンズが91歳のときにチ
ャーリー・ヘイデンとレコーディングした『COME SUNDA
Y』を聴いている。また、マイルス・デイビスの『IT NEVE
R ENTERED MY MIND』などを聴いていると、生き
ていて本当によかったと思う。ドストエフスキーの『貧しき人々
』や、中原中也の詩集はどうだろう?エルビス・コステロの『S
he』も。こんなに素晴らしい世界を知らないひとがいるのだか
ら、なんてもったいない。楽しみはひとそれぞれ、まったくちが
う景色なんだな。

オジサンはオジサンのぼくにはぼくの風景がある。カウンターの
すみとすみで珈琲をすする、それぞれの朝である。


HOBO

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Mr.HOBO

ちょっと病気をし
凹んでるとき、
ひょんなことから
1974年製のワーゲンを
手にいれた。
車庫で30年も眠っていた
オレンジ色のワーゲン。
命を吹き込んで
一緒に走ろうと思った。

これは
少年HOBOの
ゆる~い日記だ。

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