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スロウ

スロウ


僕の知っている君はそんな弱虫じゃない
愚痴ばかり食べて生きるそんな奴でもない
口惜しさは拳を握らせ
優しさは涙腺をゆるませるだろう
「頑張れ!」といえば横を向く君だから
僕はそれを口に出さず 願うだけにする

そう
スロウ
ゆっくりと踏み出そう
噛みしめるように歩こう
振り向き はじめて気づく途上に
あした咲く花の 種子をまこう


動かない君の横を過ぎる風はない
だから流れた汗も乾かないのだ
言い訳は捨てなくていいポケットにしまおう
ときどき眺めて懐かしむといい
「駄目だ!」といえば口を尖らす君だから
僕はそれを口に出さず 願うだけにする

そう
スロウ
ゆっくりと踏み出そう
噛みしめるように歩こう
振り向き はじめて気づく途上に
あした咲く花の 種子をまこう


君の肩に舞い降りるのはきっと僕じゃない
結晶のように見えるがそれはきっと僕のため息だろう
凍えそうな街にジングルベルが聴こえる
君は独りなんだと思い知るがいい
「愛してる!」といえば泣き出してしまう君だから
僕はそれを口に出さず 想うだけにする

そう
スロウ
ゆっくりと踏み出そう
噛みしめるように歩こう
振り向き はじめて気づく途上に
あした咲く花の 種子をまこう




・・・・これは、5年ほど前に書いた曲だが、いつまでも具現す
ることなく創作ノートに放置されていた。詩ができ、曲がついた
が、だれのこころの庭にも届けることをしないHOBOである。
どんなに良い案をもっていても、時や資金があったとしてもそれ
を具現化できるひとがいなければ、せっかくの宝も持ち腐れてし
まう。カタチのあるものならまだいい。カタチのないものの具現
化は、いったい誰に託そう。

デニスというアメリカ人が営っているBARを紹介され、ちょっ
と遅い時間にお邪魔してきた。「こんな時間にすいません!」と
いうと、「ぜんぜんですよ。」と、日本人よりうまい日本語で迎
えてくれた。さすが日本にきて20年、ベテランのナイスガイで
ある。ぼくは、夜、長く車を離れるときはどこに行くにもギター
をぶらさげていく。名古屋で盗難にあってからの習慣だ。昼は昼
で車内の温度が上がることから、要するに昼も夜もギターケース
と歩いている。
「ギブソンですね?」と、ケースのロゴを見てデニスが訊いてき
た。
「ちょっと見せてもらっていいですか?」というので、ケースか
ら出して渡してあげた。「ほ、ほ~!」とかいいながら、デニス
はかなり器用にギターを弾く。ぼくがこの店を紹介されたのは、
デニスがむかしピアノ弾きだったということを聴いたから。店の
奥に傷だらけのYAMAHAがあった。デニスはぼくの創作ノー
トをぺらぺらとめくりながら、軽く頷いたり、じっと天井を見つ
めたりした。
「HOBO、ちょっとこの曲をやってみてくれないか?」と、デ
ニスがぼくに言う。<スロウ>という曲だった。デニスは向かい
のコンビニまで走って、創作ノートの<スロウ>のページをコピ
ーしてきた。デニスは店のシャッターを下ろし、「さあ!やろう
!」

デニスはピアノの前に座っていた。ぼくは5年ぶりに唄う<スロ
ウ>を、ぼく自身のどこに響かせよう?すこし震える声で。
デニスは途中までじっと聴いていた。しかし、2コーラス目のア
タマから静かに鍵盤をたたき始めたのだ!・・・・なんて温かい
音なんだ!ぼくの<スロウ>が、こんなにも太く、こんなにも豊
かに、やさしく、せつなく響いている。ぼくの中の少年がむくむ
くと起きあがる。デニスはオスカー・ピーターソンのようなソロ
を弾いた。ぼくの<スロウ>が、はじめて、ぼくになった。

デニスは、「いい!いい!」といって、なんどもなんども頷いて
いる。
「HOBO?この歌に出てくるすこし病んでいる〔君〕の人格と
、突き放すような強い愛で遠くから見つめる〔僕〕の本当のやさ
しさが痛いほど伝わってくるよ。素晴らしい!ナイスソング!」
と、ほめてくれた。

デニスは素晴らしいピアノを弾いてくれた。そして<スロウ>を
みごとに具現化してくれたのだ。
「ありがとう、デニス!」といってデニスの店をあとにした。ギ
ターケースがカラカラ笑う。すこし寝ぼけた水銀灯に「おはよう
!」といい、ぼくは何十年かぶりのスキップをした。ああ!泪が
止まらない・・・・
<スロウ>のなかの〔君〕に、会いたいと思った。



HOBO

コメント

No title
すてき……。
とっても。
  • 2014-10-05│12:42 |
  • 彼岸花さん URL│
  • [edit]
ホーボーさあん、素敵すぎだと思います。スロウ。ありえない!
  • 2014-10-05│13:32 |
  • のりたん URL│
  • [edit]
彼岸花さんへ
おはようございます。温かいコメント嬉しいです。
むかし、チンチョウゲさんという文化人がおられまして、いつもぼくの作品に勇気をいただきました。懐かしく思います。

自分の作品をもっと抱きしめてやらないと、そんなふうに思う、きょうこのごろです。

HOBO
  • 2014-10-06│08:18 |
  • HOBO URL│
  • [edit]
のりたんへ
のりたんサン、コメント嬉しく思います。
これからも作品づくりにせいをだしますので、応援してくださいね。
行き詰まりの原因は、自分に嘘があるからなんですよ。まっすぐ向き合う勇気がないからです。
頑張ります。

HOBO
  • 2014-10-06│08:23 |
  • HOBO URL│
  • [edit]
HOBO、連絡ありがとう!大丈夫、必ず理解者はいる。まずは自分を見失うことなく、そのままのお前でいてくれ。
  • 2014-10-06│11:56 |
  • 黄昏のベースマン URL│
  • [edit]
No title
すごく、すごく、すてきです。
色つきのためいきが出ました。
  • 2014-10-06│13:25 |
  • Lily姫 URL│
  • [edit]
黄昏のベースマンへ
そうだね、甘えちゃいけないね。ありがとう!
  • 2014-10-06│19:43 |
  • HOBO URL│
  • [edit]
Lily姫さんへ
いつもありがとうございます。どんな色のためいきなのか?それが創作の面白いところですね。夏がすぎたら、なんか早いですね、

  • 2014-10-06│19:50 |
  • HOBO URL│
  • [edit]
No title
HOBOさん、おはようございます。

自分の良いところを引き出してくれる人に出会えるって、宝物を見つけるより難しいと思います。

素敵な時間を持ててよかったですね。
  • 2014-10-06│23:22 |
  • まん丸クミ URL│
  • [edit]
まん丸クミさんへ
おはようございます、
まん丸さん、コメントありがとうございます。宝物を探すよりむずかしい・・・・そうなんです、その通りなんです。

この<スロウ>という作品を聴いたある人は、この歌を別れの歌だといいます。あるひとは死者に対する別れだといい、あるひとは求愛の歌だといいます。それぞれどれも正解で、そんな風に幾通りの解釈があっていいんだと思います。ぼくの手から離れた証拠ですからね。

まもなく帰れると思います。
  • 2014-10-07│07:56 |
  • HOBO URL│
  • [edit]
なるほどなあ。
HOBOさん、この歌は去年の3・11、復興ライヴのアンコールでやった曲ですね?いろんな「君」の心に響いたはずです。育つ歌とはこういう歌なんですね。またやりましょうね。お体のほう、もうじきですか?こちら、ぎっくり腰はなおりました。
  • 2014-10-07│08:16 |
  • マスター URL│
  • [edit]
マスターへ
マスター、こんばんは。
マスター、アンコールの曲は<たとえば>です!笑
まあ、似たようなもんです。体調をととのえます、ライヴはもうすこし待ってください。
  • 2014-10-07│19:30 |
  • HOBO URL│
  • [edit]

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Mr.HOBO

Mr.HOBO

ちょっと病気をし
凹んでるとき、
ひょんなことから
1974年製のワーゲンを
手にいれた。
車庫で30年も眠っていた
オレンジ色のワーゲン。
命を吹き込んで
一緒に走ろうと思った。

これは
少年HOBOの
ゆる~い日記だ。

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