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赤いシャツと秋の青い空。

ぼくは今年の夏、二度も四国に行った。ジョージ・ナカシマの椅
子のことで高松市の工房を訪ねたのだが、その工房のすぐ近くの
道の駅で、ぼくは忘れられない光景を眼にする。

何年かかってもいい、ぼくには店を開くことの他に、もうひとつ
夢がある。旅の途中に撮り貯めた写真で<まざあ>という写真展
をひらくことだ。ほとんどそれは誰も知らない企画であり、解り
得ない自分の中だけの記しでもある。ぼくは、世の中の<母>を
撮りたくて旅をしている。

一度目に高松を訪れたとき、その道の駅で、かなり高齢の母親を
介護する息子さんを見た。息子さんはぼくよりすこし年上の痩せ
た背の高いひとで、母親をおんぶしてトイレまで連れていく。車
椅子に座らせようとしても「いやだ!いやだ!おんぶがいい!」
と言う白髪の小さな母である。息子さんは「わかったよ、」と、
優しく、自分のこころに向かって呟いている。白髪の母親は嬉し
そうに、息子の背の上でお漏らしをした。

二度目に高松を訪れその道の駅に行くと、また同じ場所にその親
子の車があった。どうやらその親子はその車のなかで暮らしてい
るようである。公衆トイレの近くの屋根のついたスペースにいつ
も親子の車があった。二時間おきに母親を背負い身障者用のトイ
レまで母親を運ぶ息子。ぼくにはできぬ行いだ。母親はその日も
車椅子に乗るのを嫌がった。どうやらおんぶも嫌がっているよう
だ。「家に帰りたいよお~、家がいい!帰ろうよお~!」と叫ん
でいる。「母さん、もう家はないんだよ、」と、息子はまた自分
に向かって呟いている。
けっこう車中泊をすることの多いぼくは車中泊の虚しさをよく知
っている。その夜も手回しの携帯ラジオを聴きながら車の天井を
たたく雨の音を聴いていた。寂しい時である。すると雨の音に混
じって、がんっ!がんっ!と、なにか、つぶれるような音がした
。からだを起こし外に目をやると、ずぶ濡れになったさっきの息
子さんがトイレの前に置いてある鉄でできたゴミ箱を思いきり蹴
りあげていた。何度も何度もくりかえし、こんちくしょう!と言
いながら、、、

朝早く起きると息子さんは手洗い場で歯をみがいていた。「お母
さんは?」ときくと「まだ寝ています。」と応えた。「お母さん
が目を覚ましたら写真を一枚だけ撮らせていただけないでしょう
か?」とお願いすると、少し間をおき、まっすぐぼくの目を見な
がら「いいですよ!」と嬉しそうに承諾してくれた。どちらにし
ょうか迷ったが、結局カラーフィルムで撮らせていただくことに
した。それは、お母様の着ていた赤いシャツがあまりにも鮮やか
だったことと、昨日の雨がウソのように、晴れあがった青い秋の
空がそこにあったから、、、、「チズ!」といいシャッターを
きると、息子と母はヒマワリのように笑った。

・・・・車中泊をしても帰る家があり、待つひとがいるぼくは
幸福者。そしてまだぼくの母はボケていない。旅をしていると母
は毎日午後3時になると電話をかけてくる。ぼくがそうしてくれ
と言ったからだ。
「お元気ですか?」と、いつもかけてくる。母はまだぼくのこと
を覚えている。

「しっかりしろよ!」と、いつもぼくは母を叱咤した。それは母
にとってあまりにもきつい叱咤だった。
「どうしてそんなに母さんを責めるんだい?」と、いつも母は顔
を歪めた。
「しっかりしてほしいからだよ母さん!」
強く熱く叱咤するたび、母は泣いた。
ある日、母はこんなことを訊いてきた。
「母さんはなにかお前の役にたっているかい?」
ぼくは言葉を失った。
「当たり前じゃないか!なに言ってるんだよ!」と母に言うと、
母は大きな泪をひとつだけこぼすのだった。すこしでも息子の役
にたちたいという母の想いを、ぼくはないがしろにし、忘れてい
たように思う。すこしでも役にたつ存在であるということが母の
生き甲斐だったのだ。

「まざあ」という写真展をやろうと思う。高松の道の駅で撮らせ
ていただいた痴呆の母。赤いシャツと秋の青い空。ぼくの旅はま
だ終わりそうにないが、いつも午後3時に母の声が聴けるのだ。

「お元気ですか?」、、、か、、、

母さん、あなたはじゅうぶんぼくの役にたっています。じゅうぶ
んすぎるぐらいです、ところで、、、ぼくはあなたの役にたって
いるのでしょうか?



HOBO

コメント

写真展『まざあ』
こんにちは!
写真展『まざあ』楽しみですね。
「母なるもの」が写っているのでしょうね。
いい企画だと思いますよ。
楽しみにしています。
  • 2014-10-13│13:27 |
  • 只野乙山 URL
  • [edit]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2014-10-13│13:33 |
  • [edit]
乙山さんへ
乙山さん、台風でっせぇ~!
コメントありがとうございます。
できたじゃないですかあ!ホンモノのフルレンジですよ!やるなあ、

写真展<まざあ>は、おっしゃるように、母なるものの、強さと、悲しさ、優しさ、虚しさ、そんなものを全部持ち合わせた、まざあ。テーマが広くて深いですから、ずっと前から考えてたんですよ。ふぁーざあは哀愁が有りすぎますからね。笑

  • 2014-10-13│14:59 |
  • HOBO URL│
  • [edit]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2014-10-14│00:20 |
  • [edit]

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Mr.HOBO

Mr.HOBO

ちょっと病気をし
凹んでるとき、
ひょんなことから
1974年製のワーゲンを
手にいれた。
車庫で30年も眠っていた
オレンジ色のワーゲン。
命を吹き込んで
一緒に走ろうと思った。

これは
少年HOBOの
ゆる~い日記だ。

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